ムーンショット ~長期的な世界経済の成長につながる技術革新の芽を探そう
6G関連は、破壊的イノベーション を起こすためのムーンショット
困難だが実現すればインパクトをもたらす挑戦は「ムーンショット(Moonshot)」と呼ばれます。これは、米国のアポロ計画におけるジョン・F・ケネディ大統領の「1960年代が終わる前に月面に人類を着陸させ、無事に地球に帰還させる」という言葉にちなんだものとされ、最近では国家プロジェクトだけでなくGoogleなどの民間企業においても企業戦略としてムーンショットを発表しています。
最も有力なムーンショットの1つともいわれる次世代高速通信「6G」関連の記事が9月17日の日経朝刊1面トップに掲載されています。
5Gの10倍以上の高速通信が可能な6Gは2030年頃の商用化が見込まれており、6G中核技術の特許出願数を分析したところ、中国40.3%、米国35.2%、日本9.9%となっているとのことです。5Gの標準必須特許のシェアが中国35%、米国15%、日本10%程度であったそうなので、米国勢が大きく巻き返しを図っている状況ですね。
既存のルールを根本的に覆して全く新しい価値を創出するような革新を「破壊的イノベーション」といいますが、6Gはこの「破壊的イノベーション」を引き起こすといわれ、しかも10年ほど先の比較的想像しやすい未来のものであるため注目度は高いといえます。6G関連は、破壊的イノベーション を起こすためのムーンショットのうち、投資対象として取り上げやすいテーマの1つであるといえるでしょう。
バンク・オブ・アメリカのTech ‘Moonshots’
9月16日のブルームバーグニュースは、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストがテクノロジーの新機軸(Tech ‘Moonshots’)に関するリストを発表したことを報じています。「次のアマゾン、アップルを探せ」という記事ですね。
ハイム・イスラエル氏が率いる同行のチームは、6G通信ネットワークなど、テクノロジー面のムーンショット(原文では Tech ‘Moonshots’ )14項目を公表し、「人々の生活を一変させる可能性がある技術の到来は、考えられているほど遠い未来ではない」としています。
同チームの試算では、ムーンショット14項目の市場規模は現時点では3300億ドル(約36兆円)であり、2030年代までには年率36%拡大(すごい!どんな試算なんでしょう?)して6兆4000億ドルに達する可能性があるといいいます。過去のS&P500種株価指数の構成企業の増益率は年率6%となっているそうなので、まさに次のアアマゾン、アップルが今ここにあるはずだということでしょう。
気になる ムーンショット14項目 は以下の通りです。
Tech ‘Moonshots’
6G通信ネットワーク
原題:BofA Identifies Tech ‘Moonshots’ to Catch Next Apple, Amazon より
エモーショナル人工知能
脳コンピューター・インターフェース
バイオニックヒューマン
不老不死
合成生物学
ワイヤレス電力
ホログラム
メタバース
電動の垂直離着陸機
海洋テクノロジー
次世代バッテリー
グリーンマイニング
炭素の回収と貯蔵
日本政府のムーンショット推進
国内では、2018年6月14日の「総合科学技術・イノベーション会議(第39回)」において有識者議員から必要性が提言された「ムーンショット型研究」が政策として採用され、同年の補正予算で1000億円の基金を創設、現在では7つのムーンショット目標が設定されています。
が、ツッコミどころ満載ですね。
まず、目標が2050年が6つ、2040年が1つで超超超長期すぎます。せめて1つでも2030年を入れましょうよ。
つぎに、内容がぶっ飛びすぎでしょう。有識者議員の面々が「従来の延長線上にない」とか「全く新しい」とかを真正面から受け止めすぎたんではないでしょうか。いや、2050年までに人が身体、脳、空間、時間の制約から解放されるとか、人と共生するロボットとか、100歳まで健康不安なく人生を楽しむとか、むしろ見てみたいし、あってもいい目標とは思いますが、そんなものばかりでは・・・。現在の国民ともっと寄り添ってもらわないと・・・と思ってしまします。せめて「2030年までに次世代6G通信ネットワークを実用化し、○○で✕✕な社会を実現する」みたいなものを入れてほしいですね。
BofAの「Tech ‘Moonshots’」にも「バイオニックヒューマン」とか「不老不死」とか凄いものもありますが、「6G通信ネットワーク」「ワイヤレス電力」「次世代バッテリー」など実利があって想像しやすいものが入っています(さすがに投資家目線が)。
総合科学技術・イノベーション会議のムーンショット目標 と有識者議員の面々は以下の通りです。
ムーンショット目標
1.2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
2.2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
3.2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
4.2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
5.2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
6.2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
7.2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現
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考えた人たち(有識者議員:2021年4月現在)
- 上山隆大 - 元政策研究大学院大学副学長・教授
- 梶原ゆみ子 - 富士通株式会社理事
- 小谷元子 – 東北大学理事・副学長、同大学大学院理学研究科教授
- 佐藤康博 – みずほフィナンシャルグループ取締役会長、日本経済団体連合会副会長
- 篠原弘道 - 日本電信電話株式会社取締役会長、日本経済団体連合会副会長
- 橋本和仁 - 国立研究開発法人物質・材料研究機構理事長
- 藤井輝夫 - 東京大学総長
今後も注目していきます
当サイトでは、技術革新を背景に世界経済は長期的な成長トレンドを持続するとの前提で長期的な上昇トレンドに乗る戦略を基本としています。
ですので、当然に「破壊的イノベーション」や「ムーンショット」なども切り口としては注目しており、今後も取り上げていきたいと思います。