米国のコロナ対応は有事から平時へ? ~ファイザーのブースター接種を米FDA第三者委は65歳未満で勧告せず
米食品医薬品局(FDA)は、第三者委員会の議論を踏まえた勧告を受けて承認を最終判断します。9月17日に開いた第三者委員会では、ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンの追加接種(ブースター接種)を審議し、16歳以上65歳未満への承認を勧告しませんでした。一方、65歳以上や重症化リスクの高い人へのブースター接種については承認を勧告しました。
と言われても、何が議論されていて何を問題にしているのか見えにくいと思いますので、以下日経の報道をベースにまとめてみました。
FDAはファイザー製ワクチンのブースター接種を承認するか?
ファイザーがFDAに提出したデータ
- 2回目の接種4カ月以降にデルタ型への感染予防効果は当初の53%に低下。デルタ型以外に対しても97%から67%に低下。
- ブースター接種後の感染リスクは約11分の1になる。
外部有識者が参加する第三者委員会の結論
- 広く一般(16歳以上)を対象: 賛成2人、反対16人で勧告を見送り
- 65歳以上や重症化リスクの高い人を対象: 全会一致で勧告
第三者委メンバーの指摘
- 高齢者や重症化リスクの高い人の予防効果を高めるための追加接種は有効
- 広く一般への追加接種の安全性を見極めるにはデータが不十分
- 時間の経過で予防効果が低下してもFDAが安全なコロナワクチンに求めた基準である50%の有効性を上回る
米国のブースター接種計画は?
9月19日、バイデン米大統領の首席医療顧問を務めるファウチ国立アレルギー感染症研究所長は、上記のようなFDAの状況を受けて「米当局の検討作業はまだ終わっていない。ワクチンの安全性や有効性に関するデータは今後増えていくため、再検討して勧告が変更されることもあり得る」と米ABCテレビのインタビューで強調したとのことです。
要するに、当局はまだ検討中なのでデータが増えれば勧告も変更されるとの見方であり、ブースター接種計画自体は粛々と進んでいくということでよさそうです。で、ファイザー製以外のワクチンについては、検討作業が数週間先になるとも報じられています。
製薬各社はワクチンの世界的な需要に応じきれていない
世界保健機関(WHO)は盛んにブースター接種よりも途上国への供給を優先すべきだと訴えている一方、イスラエルは世界に先んじて12歳以上を対象にブースター接種を進めており、英仏独もすでに開始、米国は9月から、日本でも8か月経過以降のブースター接種開始を決めています。
WHOの言い分も確かですが、自国民の安全を優先する各国の対応も理解できます。ワクチンの供給が需要に追い付いていないということは確かなようです。
そんな中で、米バイデン政権がコロナワクチンを世界各国・地域に無償供与するため「5億回分の追加購入に向けファイザーと交渉を進めている」との報道がありました。国際社会からの批判を受け止めつつ米国でのブースター接種を進めるため、「世界も救うし米国民も救う」との意思表示をしているように見えますね。
ファイザー(PFE)への評価は不変
そもそも、コロナワクチンは通常6年はかかる開発期間をトランプ政権下の「オペレーション・ワープスピード」によって1年で開発したという経緯があります。これは、有望なタネを見つけたら見切りで治験を開始し、生産も進めてしまうという無茶苦茶なものでしたが、これは軍事作戦と同じ「有事モード」で行われていたということでもあります。
今回のブースター接種計画が、「勧告」→「承認」→「実行」という通常の手続きで進んでいくならば「平時モード」への切り替えが進んでいるということになります。短期的にスピード感は損なわれますが、コロナワクチンへの需要は世界的に当面は衰える可能性は低いと考えており、ファイザー(PFE)への評価に変更はありません。