ソフトバンクグループ劣後債 ~孫正義氏への信用とキャッシュを生み出すビジネスモデルを評価
個人向けの劣後債は、比較的高い金利条件もあって人気商品となっています。ちょっと前の記事ですが5月26日の日経ビジネス記事によれば「最近ではオリックスや楽天グループ、商船三井、三菱UFJフィナンシャル・グループと、幅広い業種で劣後債の発行が相次いでいる」とのことです。ただ、こうした報道記事では「劣後債」について一括りにまとめられてしまっていることと、期限前償還条項等も合わせて説明しているので知識がない方が読むと混乱してしまいそうです。
劣後債は買いか ソフトバンクG・楽天…発行相次ぐ
2021年5月31日 日経WEB(日経ビジネス5月26日記事の再編集)
劣後債:劣後特約(※)が付いた債券
※劣後特約:劣後事由(倒産など)が発生した場合、元利金支払が他の債権より後回しになる(株よりは優先)
他にも様々な条件が付いているケースがありますが、他の条件は劣後債でなくても付く可能性があります。
倒産した場合は「 支払が他の債権より後回しになる 」ので、資産整理後の残余財産が他の一般債権者で分配され、全損になる可能性が高いといえます。
よって投資判断の際には、
- 会社の経営が信用できるか
- キャッシュを生み出すビジネスモデルが存在するか
以上2点は最低限クリアしなければならないと考えます。
当然、それが投資期間にわたって有効かどうかも判断基準になりますね。
ソフトバンクグループ(9984)第3回無担保社債(劣後特約付)
発行額は5億円でうち個人向けは4500億円(募集期間は9月13日~29日)です。調達資金は主に2021年度に期限を迎える個人向け劣後債の償還に充てる模様。
9月10日の日経報道によると、同社は2021年度に償還期限を迎える社債が期初時点で約1兆2000億円で、2021年2月、6月に国内ハイブリッド債を計5820億円発行、今回の劣後債も合わせると大部分にメドが付いたことになるとしています。
ソフトバンクG、劣後債5000億円 うち個人向け4500億円
2021年9月10日 ~日本経済新聞
この劣後債は個人投資家への受けは良いようで、9月15日14:30時点でSBI証券のサイトでは「本債券は大好評につき完売いたしました」と表示されています。
債券格付はBBB+(JCR)、期間約7年、劣後特約は以下の通りです。
●劣後リスク
出典:発行登録追補目論見書 2021年9月
本社債は劣後特約付社債であり、以下に示す事由(劣後事由)発生時以降は当社の一般債務
が全額弁済されるまで本社債の元利金支払は行われません。
(劣後事由)
① 日本法に基づく当社の清算手続(会社法に基づく通常清算手続又は特別清算手続を含
む。)の開始
② 日本の裁判所による当社の破産手続開始
③ 日本の裁判所による当社の会社更生手続開始
④ 日本の裁判所による当社の民事再生手続開始
⑤ 日本法によらない、当社の上記①ないし④に相当する清算、破産、会社更生、民事再生、
又はこれらに準ずる手続の開始
なお、当社は、本社債につきいかなる場合といえども期限の利益を喪失しません。
(2021年9月22日:劣後リスクについての引用を更新しました)
当サイトの主観的評価
劣後債投資にあたって最低限クリアすべき2項目について、当サイトの主観的評価は以下の通りです。
- 会社の経営が信用できるか
〇:過去同社は経営破綻したことはなく、創業者の孫正義氏は現在でも約22%の株式を保有する筆頭株主であり、今後も何かを守るために同社を整理するインセンティブは持たないと思われます。また、償還期限の7年であれば、孫正義氏の(またはそれを引き継いだ)経営体制が崩れていないと想定できます。
- キャッシュを生み出すビジネスモデルが存在するか
〇:投資ビジネスに不確定要素が多いものの、中核のIT関連ビジネスは高い成長が期待できることに加え、通信ビジネスにおいては引き続き安定したキャッシュフロー創出が期待できると判断します。
実際の投資にあたっては、求めるリターンの水準、投資期間、資金属性等を勘案して判断することになります。あくまでもリスク資産への投資となりますので、リスクに見合ったリターンが得られる条件になっているのかを個別案件ごとに見ていく必要があると考えます。