村田製作所(6981)、米Eta Wirelessを買収

2021年9月3日、RF回路の消費電力を削減する「Digital ET技術」を保有するEta Wireless(イータ・ワイヤレス)社を買収完了したと報じられました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/52231e64959dfbbae275c1bfd3f577ac73f6b573

当サイトでは、8月31日の記事において「村田はコンデンサの会社」と紹介させていただきました。

これはその通りで、製品別売上ではコンデンサが40%超とトップシェアです。

会社HP資料より当サイト作成

そのうえで、用途別ではスマホ向けと自動車向けが主で、今後の成長も期待できると申し上げました。

で、この用途別売上という切り口でみると通信向けがメインの会社(40%超)とも言えます。

会社HP資料より当サイト作成

今回の買収について、会社HPでは以下のように説明しています。

近年、モバイル端末のICの高性能化や多機能化による性能向上が進むにつれ、端末の消費電力を削減する重要性が高まっています。各電子部品の開発において消費電力削減のため取り組んできたハードウェアの作りこみやアナログ的な手法は、5Gや次世代の6Gなどの広帯域幅信号では改善に限界があることが課題となっています。さらに優れた省エネルギー性能を実現するには、RF回路を効率よく動作させるデジタル電力制御技術を用いた信号処理によるアプローチが必要不可欠となっています。

Eta Wirelessは独自のPower management IC(以下「PMIC」)※2とDPDアルゴリズム※3で実現したDigital ET技術により、RF回路内の電圧を最適化し、消費電力を削減できます。専用設計されたPMICはRF回路に必要となる電圧をデジタル化かつ最適化し、5Gなどの広帯域幅信号にも対応したほか、過剰な電力消費の抑制に貢献しています。また、DPDアルゴリズムはRF回路内で発生するひずみやノイズを低減する独自のアルゴリズム設計により、さらなる消費電力の削減を実現します。
村田製作所は本買収により、これまでRF回路向け電子部品で培ってきた設計技術とEta Wirelessが有するDigital ET技術とのシナジー効果により、さらに優れたRF製品の提供を目指します。

※2 RF回路に与える電圧を生成する回路
※3 Digital Pre Distortionアルゴリズム。RF回路で発生するひずみやノイズを打ち消す信号を生成する

専門知識なしで読むともはや宇宙語のような説明ですね。

色々調べながら大掴みに要約すると、

  • モバイル端末の高性能化で電力消費が増える→省電力ニーズが高まる
  • 5Gとか6Gになると、今までのように頑張っても省電力化に限界がある

とのことで、米 Eta WirelessのDigital ET 技術は

  • PMIC:必要な電圧を最適化して過剰な電力消費を抑制
  • DPDアルゴリズム:回路内のひずみやノイズを低減して消費電力を抑制

といった新たな切り口の技術である模様です。

今回のような買収は、即座に売上・利益にインパクトを与えるものではありませんが、省電力化技術を向上させることは今後のスマホのさらなる高性能化、自動運転技術の実用化やEV化の進展等を見据えた長期戦略の一環であると捉えられるため、同社の長期ビューに対する信頼度を高めるものとして評価できると思います。

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