日本航空の劣後債は増額して発行へ ~月150億円のキャッシュが燃えている会社の劣後債が人気の理由は?

日本航空の劣後債は増額して発行へ ~月150億円のキャッシュが燃えている会社の劣後債が人気の理由は?

JAL劣後債、発行額は1000憶円→1500億円(上限)に増額

日本航空(JAL)の劣後債(期限37年)は10月12日に払込完了、発行額は1500億円で当初予定の「1000憶円程度」より増額しての発行となりました。投資家の強い需要に対応したようです。条件は、当初7年間は1.6%の固定金利で7年後に期限前償還(コール)が可能になり、コールがなければその後変動金利となる37年債(!)です。

JALは2010年1月に会社更生法適用、2月に上場廃止となりJAL株式は文字通り紙屑となりました。このような状況となれば劣後債も結果は同様です。そして、2012年9月に新生JALとして再上場を果たしましたが、コロナ禍の影響を受けて世界の空運業界は危機的状況となっています。JALの経営状況は大丈夫なのでしょうか。

1Qのキャッシュバーンは月100~150憶円

企業の健全性を測る指標として”キャッシュバーン”という考え方があります。現金(cash)を企業活動に必要な燃料にたとえ、現金を燃やす(burn)ペース(減り方)に注目するもので、単純に言うと(現金支出-現金収入)となります。例えば、月次の現金支出1000億円に対し現金収入が900憶円であればキャッシュバーンは月当たり100憶円になるので、1か月で100億円の現金が手元から焼失していることになります。

JALのIR資料によれば、コロナ禍の影響から2020年4-6月期のキャッシュバーンは450~500憶円/月でであり、2020年1Qには1500億円規模のキャッシュを燃やしていたことになります。こんな状態では会社が持ちませんので経費削減など対策を打っていきました。足元では貨物が好調であったり国内線が持ち直したりしている効果もあり、2021年4-6月期のキャッシュバーンは100~150憶円/月と改善してきているようです。以下、足元の状況は会社の決算会見で確認しましょう。

続いて、手元流動性とキャッシュバーンについてご説明いたします。6月末の手元現預金は3,570億円でした。未使用のコミットメントライン3,000億円と合わせて、6,500億円を越える、充分な手元流動性を確保しております。また、緊急事態宣言下にも関わらず、この第1四半期のキャッシュバーンは月間約100-150億円に抑えることができました。第2四半期以降のキャッシュバーンは、月間約50億円程度まで減少する見込みです。緊急事態宣言下ではありますが、直近では払い戻しによる出金より、新規発券による入金が上回っており、また、国際貨物が好調なため、キャッシュバーン解消の方向へ進んでおります。国内旅客需要によりますが、9月頃には営業キャッシュフローはプラスに転じると見込んでおります。

2021年8月3日 JAL決算会見より

確認すると、6月末の現預金は3570億円で、今回の劣後債と劣後ローンを合わせて10月に3000億円を調達するので手元のキャッシュは約6500億円、未使用のコミットメントラインが3000億円あるので約9500億円の手元流動性がある状況ですね。そして、2Qのキャッシュバーンはさらに改善して50憶円/月との見込みなので150憶円燃えているとしても約9350億円の流動性があります。コロナ禍の影響が強かった2020年4-6月期のキャッシュバーン450~500憶円のような四半期が再度あったとしても、6回分は耐えられる計算となりますね。なので、コロナワクチンの接種率が上がり、治療薬が普及し始めれば人の流れも戻っていく状況を踏まえれば、今回のコロナ禍の延長線上でJALが倒れることはないと考えます。とはいえ、もうひと波で現預金水準はやばいことになっていたので、今回先回りして資金調達したことは経営判断として正しいといえるでしょう。

劣後債人気は続く

JALが6月に発行した普通社債(期限5年)の金利は0.58%であり、最終償還年限が37年とはいえ発行から7年後に期限前償還(コール)が可能になるため、倒産リスクが低いと考えれば固定利率1.6%の実質7年債として利回りの高さは魅力的に映るでしょう。長期化する低金利の状況下で投資家の運用難は続いており、ソフトバンク劣後債の記事でも触れましたが劣後債の発行は増えています。こうした理由による劣後債への人気は全般的に言えることですね。

ただ、コール条項が付いているといっても必ず償還されるわけではありませんし、今回のJAL劣後債の場合は最長37年です。足元の経営状況では倒産リスクが低いとはいえ、37年後どうなっているかは、特に空運業界の見通しは楽観できるものではないでしょう。

劣後債に過熱感、個人マネー流入 逆回転リスク警戒: 日本経済新聞

債務の返済順位が普通社債よりも低い劣後債に過熱感が出ている。劣後債の利回りが年初から大きく下落(価格は上昇)している。劣後債を組み入れた主要な投資信託の純資産…

上記の日経記事にもありますが、今後も劣後債の発行は高水準で推移しそうですね。当たり前ですが、個別に投資を検討する際は企業の経営状況や業界の見通しまでも含めて検討し、自らのビューとリスク管理のもとに投資することが必要でしょう。投資信託を通じて投資する際にも、高リスク資産への投資であることを前提に資産配分すべきだと考えます。ただ、使い方によっては魅力的な資産クラスですので、債券系のファンドについては別の機会に取り上げたいと思います。

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